
なぜ「船員職安法」が経営に必要なのか?
昨今、労働人口の減少により、あらゆる業種において人手不足が深刻化しております。また、既存の企業における労働者の平均年齢も上昇傾向にあり、後継者の不足・不在による技術・スキルの承継も大きな経営課題となっております。
この他、せっかく採用しても、特に若い人材については前述の人手不足から転職が容易になっていることもあり、入社3年以内に退職してしまう例も後を絶ちません。
せっかくコストをかけて採用したのに、すぐに辞めてしまっては事業の存続性にも関わってきますね。
このような状況はなにも「陸上」で活動する企業に限らず、海運など船舶を運航する企業など、海に関わる企業にとっても深刻な事態として顕在化しています。
こうしたことから、人材を採用する際には、法令の規定を無視して、あるいは知らずに「このくらいなら大丈夫だろう」との認識で採用してしまい、後で事業停止や罰則等、重大なペナルティが科せられる可能性も否定できません。
このような事態を回避するため、「船員職業安定法」の基礎的な部分を知っておくことは、自社を法令違反から守り、優秀な人材を適切な方法で確保するための重要な戦略であると考えられます。
つまり、「会社をトラブルから守るためのルール」を知っておく、という発想が必要といえるのです。
では以下に、船員職業安定法の規定の一部をみていきましょう。
経営者が特に注意すべき3つのポイント
① 虚偽の条件提示は厳禁(第16条:労働条件の明示)
例えば、「求人票と実際の給与が違う」となっていたら、どうでしょうか?
求職者(就職者)は「約束が違う」とすぐに退職してしまうかもしれません。それだけならまだしも(それだけでも十分痛手ですが)、今の時代、SNSですぐに拡散されます。
法律違反なだけでなく、「この会社は約束を守らない会社です」と噂が広がれば応募者の減少、離職率を高める要因となってしまいます。
② 金銭の授受に注意(第34条、第37条:報酬受領の禁止)
視点を変えて、船員職業紹介を行う事業について考えてみましょう。
船員職安法は第8条以下において、政府による船員職業紹介について規定しています。これは無料で行われます。「政府が行うことだからお金は必要ないのだな」、ということはなんとなくおわかりいただけると思います。
では、政府以外の団体などが船員職業紹介事業を行う場合はどうでしょうか?
そうした場合、船員職安法は第34条以下において、種々の条件をクリアした団体などに対し、政府(すなわち国土交通大臣)の許可を受けて、無料の職業船員職業紹介事業を行うことができる、と規定しています。
つまり、報酬を得て船員職業紹介事業を行うことはできないと規定しているのです。
もし、この規定がなかったらどうでしょうか?
無許可の業者が高額な報酬で船員職業紹介事業を行えることとなってしまいますね。
また、第37条では無料職業紹介事業者における従業者についても、船員職業紹介事業に対する報酬を受領することを禁じています。
③船員労務供給事業の禁止(第50条、第51条)
では、船員職業紹介事業ではなく船員労務供給事業についてはどうでしょうか?
これについても、船員職安法は労働組合等に限り、国土交通大臣の許可を受けた場合にのみ無料で行える旨規定しています。
トラブルを防ぐためのチェックポイント
上記にみてきた規定はほんの一部ですが、経営者が採用に際し注意すべきポイントとしては以下のことがあげられます。
①求人票の内容を定期的に見直しているか
②紹介を依頼している業者が、ちゃんと許可・届出を行っているか
③雇入契約書との整合性はとれているか
結び~海事代理士からのメッセージ

船に乗り込むという特殊な職業形態である船員さんは、出航までに優秀な人材を確保することが必要となることから、採用活動はとかくスピード勝負となりがちです。
しかし、十分に法令を遵守した上で行っていかないと、後で大きなトラブルになりかねず、最悪の場合、企業の存続にかかわる事態に至りかねません。こうした事態を招かないためにも、専門知識を持った海事代理士へご相談の上、進めて行かれることをお勧めいたします。
船員さんの採用などに関し、法的な届出や手続きで迷ったら、お気軽に当事務所へご相談ください。
